健康長寿・アンチエイジング研究委員会

各界の専門家たちが「健康長寿」「アンチエイジング」に役立つ情報を提供します

糖質制限は死亡率が上がる~長期的にはデメリットだらけ~

健康長寿を考える際に「ダイエット」という言葉を思い浮かべる方も多いと思います。

本委員会としては日本人の肥満度は総体的に高くなく、ダイエットの必然性はさほど高くないと考えておりますが、そうは言いつつも、委員会のメンバーも日々ダイエットに励んだりしています(矛盾していますね…)。

最近では低糖質・低炭水化物食を活用した糖質制限・炭水化物ダイエットが市民権を得てきましたが、その手法について委員会として見解を紹介したいと思います。

f:id:longhealthy:20190106232947j:plain

3つの食事ダイエット法の比較研究

2008年に医学誌「ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディスン」誌で発表されたダイエット法の比較研究結果は参考になります。

この調査は約300人を「低脂肪食」、「低炭水化物食(糖質制限食)」、「地中海食」の3グループに分け、血糖値・体重の変化などを2年間にわたって調査したものです。

この調査では、低脂肪食と地中海食のグループでは、男性1800kcal、女性1500kcalというカロリー制限が行われましたが、低炭水化物食のグループでは、糖質は抑えるもののカロリー制限は一切行われませんでした。

比較の結果は?

ダイエットの観点から言うと、短期間でもっとも効果があったのは「低炭水化物食」でした。

下がった体重を詳しく見ていくと、低炭水化物食のグループはマイナス4.7kg、地中海食はマイナス4.4kgで地中海食、低脂肪食はマイナス2.9kgでした。

低炭水化物食と地中海食の差は僅差ではありますが、前述の通り、低炭水化物食のグループはカロリー制限は一切ない状態ですので、いかに炭水化物ダイエットの短期的効果が優れているかがわかる結果となりました。

炭水化物ダイエット(糖質制限)の利点

炭水化物ダイエット(糖質制限)のメリットは、何よりもカロリー制限の必要がないことです。

多くの食事を制限するダイエットは、カロリーを気にするものが多いのですが、炭水化物ダイエットは糖質に特化して、いかに血糖値をあげないようにするかに専念しているという点で画期的なものといえます。

そして糖質制限を着実に行えば、短期間で体重は減りますので「やりがい」もあります。この手軽さにより、多くの人がこの手法を取り入れており、実は本委員会のメンバーも炭水化物ダイエットの経験者がいます(実際に体重減少に成功したとのことです)。

炭水化物ダイエットのリスク

しかし一方で、炭水化物ダイエット(糖質制限)のリスクもあります。

炭水化物ダイエットは手軽さはあるのですが、ストレスフリーではありません。

例えば白米が大好きな人やビールが大好きな人はものすごくストレスがかかる手法です(炭水化物ダイエットで有名な某ジムでは「ビールは一生諦めてください」と言われるとか…)。

低糖質食だけで満足できる方はいいのですが、時には白米をおなかいっぱい食べたいと考えてしまう人にとっては「長続きしないリスク」があるのです。

栄養の偏りにも問題がある

炭水化物ダイエットのマイナス面として、栄養の偏りも挙げられます。

炭水化物は体に必要な3大栄養素のひとつです。いくら現代人が糖質過多といっても、極端な糖質制限をおこなうと脳に栄養が行き渡らなくなって、集中力が低下したり、肝臓や腎臓を痛めてしまう恐れがあります。

世界各国の共通認識としては、栄養摂取のバランスとして炭水化物を55%、脂肪を25%、タンパク質を20%が目安となっています。

このバランスを崩して肉食が中心となると、脂肪酸コレステロール過多により心筋梗塞脳卒中など心血管障害のリスクが高くなってしまいます。

また、過度に炭水化物の摂取を制限すると、低血糖状態になり、動悸やめまい、失神などを起こし、そのまま命を失ってしまう恐れもゼロではありません。

やはり、体に必要な栄養素を制限するような手法はトータルで考えるとマイナスになると考えます。

炭水化物ダイエットをすると総死亡率が2割上昇

さらに炭水化物ダイエットのデメリットを示すデータとして、死亡率が上昇するという恐ろしい調査結果も存在します。

2010年にアメリカの医療関係者17万人を対象に糖質の摂取量について調査した結果が発表されましたが、糖質制限を精力的に行なっている層の総死亡率は、糖質制限をあまり行なっていない層の総死亡率と比べて20%ほど高かったのです。

なお、この調査は普通体型(BMI24〜26)の医療関係者を対象としており、「極度の肥満」の方などは含まれていません。

調査結果については明確な因果関係が明らかになっておらず、今も論争が続いている分野ではありますが、我々日本人にも参考にできる調査結果ではないでしょうか。

このように、長期的視野でみると、炭水化物ダイエット・糖質制限はとても危険をはらんでいるのです。

お勧めは「地中海食」

そうなると、ダイエットが必要な場合、どのような食事法がいいのでしょうか。

炭水化物ダイエットに代わる手法としておススメしたいのが「地中海食」です。

前出のダイエット法の比較調査では、低炭水化物食と遜色ない減量効果があった食事法です。

地中海食とは、地中海沿岸の人がよく食べている野菜や果物、穀類、ナッツなどで食物繊維を豊富に摂取する食事法です。

食物繊維はダイエットでは必須の栄養素で、食後の血糖値上昇を緩やかにしてくれます。

簡単に言うと、低糖質の食材を摂取する代わりに食物繊維をたくさん摂って血糖値の上昇を抑えるというのが、この地中海食の特徴です。

f:id:longhealthy:20190106234806j:plain

世界無形文化遺産にも登録された「地中海食」

地中海食の特徴をさらに詳しくみていくと、野菜や果物の他に、「魚を多く食べる」、「油脂類はオリーブオイルを使う」「ナッツ、豆類、全粒粉など未精製の穀物をよく食べる」、「適量の赤ワインを飲む」などがあります。

ガチガチに縛られた食事法ではないので、低炭水化物食よりは長く続けられますし、栄養バランスの面でも明らかに優れています。

そのような理由から、本委員会は低炭水化物食よりは「地中海食」をおススメいたします。

まとめ

今回は「糖質制限」の是非を問う内容で、やや否定的な見解を示すことになりました。

炭水化物ダイエットをやっている方に「やめろ」とまではいうつもりはありません。

何しろ、短期的な効果が見えやすい手法であるからこそ、流行っているダイエット方法ですから。

しかし、そのリスクは十分承知していただいて、可能であれば徐々に地中海食ダイエットに移行していただくのがよろしいかと思います。

以上、参考になれば幸いです。

【食事部会担当:早坂】