皆さんは電子機器が発するブルーライトをどのくらい気にしていますか?
職場ではパソコン用メガネをつけた人も多いように思います。
ブルーライトは健康に悪いというイメージがあるかと思いますが、実は体に及ぼす影響について論争が繰り広げられているのはご存知でしょうか。
今回は、その論争を冷静に俯瞰し、本委員会としての見解を示していきたいと思います。
- ブルーライトとは
- ブルーライトは失明につながる?
- ブルーライトは安全という反論
- 論争はしばらく続く気配
- 日本人はさほどブルーライトを気にしなくても良い?
- ブルーライトのダメージは欧米人よりも少ない傾向
- まとめ
- 参考文献
ブルーライトとは
ブルーライトとは、一言で言うと「青い色の光」です。
その特性として、目に見える光のなかでも、波長が短く、紫外線に最も近いエネルギーの強い光だと言われています。
そして、スマートフォンやパソコンの液晶画面から出される光には、このブルーライトが多く含まれていると言われています。 (ブルーライトカット機能の液晶は除く)
しかし一方で、このブルーライトについては人間に欠かせないものでもあり、私たちは毎朝、ブルーライト浴びることで、体内時計が整えられています。
このように、ブルーライトはいい意味でも悪い意味でも私たちにとって身近なものといえます。
実はいま、そのブルーライトを巡って、論争が繰り広げられています。
ブルーライトは失明につながる?
論争の発端は、2018年7月にスペインのトレド大学が英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に衝撃的な研究結果を発表したことでした。
その内容を端的に示すと、以下の通りです。
●ブルーライトを浴び続けることで網膜にある「レチナール」という物質が毒性反応によって変化し、光受容細胞を攻撃するようになる
●その結果、「黄斑変性症」の進行を早める恐れがあり、失明につながるリスクがある
「ブルーライトはかなり危険であり、スマホをやめないと失明しますよ」というような内容は、確かに衝撃的です。
ブルーライトは安全という反論
トレド大学の発表に対して、すかさず反応したのがアメリカの眼科学会でした。
トレド大学の研究発表の翌月に、「スマホのブルーライトでは失明しない」とのタイトルの見解を、学会のサイトに掲載しました。
その反論内容は要旨は以下のとおりでした。
●トレド大学の研究論文で示された実験の条件は、日常生活では起こりにくい
●具体的には、研究で使用した細胞は人の目から採取したものではない
●ブルーライトの当て方も、実際にそのような方法で眼に光が入ることはない
●したがって、この研究の結果をもとに、スマホをやめる理由にはならない
ブルーライトのトレド大学が示したブルーライトの危険性について、ほぼ全否定に近い反論をしたのです。
ちなみにアメリカの眼科学会は、ブルーライトカットのパソコン用メガネの使用を推奨していません。
その理由は、効果が不明であり長期的に使用した際の副作用が明確でないこととしています…。
この論争の裏に何か事情がありそうな気もしますね…。
論争はしばらく続く気配
この論争は今後も続いていきそうです。
というのも、ブルーライトの影響については、研究が始まってから日が浅く、リスクを判別するだけの臨床データがまだ集まらないからです。
ブルーライトのリスクを明確に証明するためには数十年の追跡研究が必要ですが、両陣営の論争は、それまで続くかもしれません。
ただ、現段階でも「ブルーライトは体内時計に影響する」ことは証明されており、そこには論争は存在しません。
一説には、ブルーライトは目を疲れやすくするとも言われており、深夜寝る前にスマホやパソコン画面を長時間見るのは控えた方がいいかもしれません。
日本人はさほどブルーライトを気にしなくても良い?
しかし一方で、日本国内だけに目を向けると、違った一面も見えてきます。
皆さんは、日差しの強い場所で、欧米人が皆、サングラスをかけている光景に出くわすことがあるかと思います。
日本人でもサングラスをかける人はいますが、欧米の方よりもその比率は少ないかと思います。 (日本人の場合、ファッションとしてかけているケースも多いかと思います)
それはなぜでしょうか?
この違いは瞳の色に原因があります。ほとんどの日本人は黒い瞳を持っていますが、それは日本人が大粒のメラニン色素をたくさん持っているからに他なりません。
メラニン色素は強い光や有害な紫外線を吸収し、目を守る役割を持っています。
日本人が欧米人よりも日差しを眩しく感じないのはこのおかげなのです。
ブルーライトのダメージは欧米人よりも少ない傾向
仮に同じ明るさのパソコンやスマートフォン画面を見た場合、メラニン色素の弱い人の方が、目の奥に入るブルーライトの量は自然と多くなります。
したがって、日差しが強くて眩しい場所でも、サングラスをかけなくても支障がない人は、ブルーライトのダメージについてはあまり気にしなくても良いのではないかと思われます。
もっとも、日本人でも瞳の色が薄い人や、眩しく感じやすい人もたくさんいます。
そのような方は、ブルーライトのダメージが欧米人並みと考えるのが妥当ですので、対策を取った方が良いでしょう。
要するに、ブルーライト対策が必要かどうかは、個人差があるということです。
巷では、怖いイメージがあるブルーライトですが、神経質に気にしすぎる必要はないかと思われます。
まとめ
今回はブルーライトについて、様々な意見などを紹介してきました。
今後、新たな研究結果が出ることも予想されますが、現時点での研究データ等を勘案すると、本委員会の見解は以下の通りです。
・ブルーライトの健康へのマイナス面は評価が定まっていない
・黒い瞳の日本人はブルーライトに強い傾向もあることから、当面は体内時計が狂わないように就寝前のブルーライトに注意する程度で良い
以上、参考になれば幸いです。
参考文献
- 奥田昌子(2017年)『実はこんなに間違っていた!日本人の健康法』大和書房
- 松井宏夫、板倉弘重(2016年)『長生き「できる人」と「できない人」の習慣』明日香出版社
- 朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASLB87WNRLB8UBQU11N.html
- ブルーライト研究会
「ブルーライトの人体に与える影響についての現在の見解と認識」2018年10月5日
http://blue-light.biz/pdf/release201810.pdf
【医療部会担当:赤司】