健康長寿・アンチエイジング研究委員会

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コレステロール論争はポジショントーク?(脂質栄養学会vs動脈硬化学会)

前回は「コレステロール値に一喜一憂するのはよそう」という見解を示しました。

今回はコレステロール論争を中心として、さらに深く洞察していきたいと思います。

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専門家たちの論争を俯瞰する

前回、「コレステロール悪者論」の根拠は覆されたと書きました。

いま、論争のテーマは「コレステロールは高い方がいいのか、低い方がいいのか」に移っています。

現在進行形で「高くても良い派」と「低いに越したことがない派」に真っ二つに分かれて論争を行なっているわけですが、どちらも科学的な根拠を用いて主張をしているのでなかなか決着がつきません。

双方の主張はコレステロールの理解を深めるのに役立ちますので、それぞれの主張を紹介していきたいと思います。



コレステロール高くても良い派の主張

まずは「コレステロールは高くても問題ない」とする方々の主張です。

この論陣を張るのは主に脂質栄養学会の関係者が多いと言われています。 富山大学の浜崎智仁教授は有名な「コレステロールが高くても問題ない」という論者であり、脂質栄養学会の理事長でもあります。

浜崎教授は17万人にのぼる調査を行いコレステロール悪者論にくさびを打ち込みました。

その研究は、とても大規模な調査だったため、2008年に結果が発表された際には、医療界からは驚きをもって受け止められました。

その結果の要約は以下に集約されます。

・血中総コレステロールは高くても低くても健康面で大きな差はなく、特に女性の場合は、顕著な差はない。

・男性の場合は、血中総コレステロールが高いほど病気にかかりにくく、長生きする傾向がある

 この研究結果は「総コレステロールは高ければ高いほどいい」ということになり、これまでの常識を覆すものでした。


コレステロールは低いに越したことがない派」の反論

一方、これに反論したのが動脈硬化学会でした。

その反論内容は、「人の死亡リスクはコレステロールの値だけでは説明できない」でした。

また、別の反論理由としては「重病でコレステロールは低い人が含まれていたのではないか」というものもありました。

がんや肝臓病などの重い病気や、高齢により衰弱した体では、コレステロールが体内で生成できなくなり、コレステロール値が下がりますが、そのような人たちの死亡率は当然のように高くなります。

実際、「コレステロールは高くても良い派」による調査結果においても「コレステロール値が低いグループは肺炎やがんによる死亡率が高い」という結果となっており、調査結果に異を唱える人たちの主張も一理ありそうです。

この論争を冷静に分析すると、どちらも決定打に欠ける印象で、はっきりとした因果関係が判明しません。

しかし、どちらもポジショントークに近い論争をしている印象があります。

学会の後ろに控える産業界などに忖度した上で、「低コレステロールが危険」「高コレステロールが危険」と極論を言い合っているような気がするのです(本委員会が取材した複数の医師も、そのような見解を持っていました)。

コレステロール論争に限らず、各学会の主張は、議論の対象が狭くなりがちです(専門家たちの論争ですから仕方のないことですが)。

しかし、専門家以外の方は、もっと人体の健康をトータルで考えていく必要があると思います。

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事実は中間地点にある

無責任を承知で言わせてもらえれば、コレステロールは高いのも低いのも良くないということが正解です。

というのも、コレステロール値が高いと動脈硬化を原因とする心臓病の発症率が上がることは、間違いのない事実とされています。

コレステロールを下げることで脳梗塞心筋梗塞の予防効果があるのは疑いようがありません。

一方で、コレステロールが低すぎるのも考えものです。

コレステロールが少なすぎると、細胞が壊れやすくなり、脳卒中のリスクが高くなります。

コレステロール脳出血が多いという事実は各種研究によって一貫して示され続けており、これは間違いない事実として存在します。

その他、前述の通り免疫力の低下やがんの死亡率上昇などにつながります。

つまり、「高コレステロールもダメ」で「低コレステロールもダメ」で、バランスが重要なのです。


頭の回転が速い人はコレステロール値が高い

また、脳には、体内の全コレステロールのうち約4分の1が集中しており、脳細胞がコレステロール全体の2割〜3割を生成しているといわています。

一般的には、頭の回転が速い人はコレステロールが高いと言われています。

脳の瞬発力を維持するためにも、コレステロールは低すぎない方が良いのです。


まとめ

今回はコレステロール論争について考えてみました。 本委員会の見解は以下の通りです。

コレステロールに関して「極論」を言う人がいたら、ポジショントークを疑うべきである。

コレステロールの適正値は「中間」にあることを忘れてはいけない。


以上、参考になれば幸いです。