健康長寿・アンチエイジング研究委員会

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各種統計・データの「国際比較」は鵜呑みにするな

国際比較は「エビデンス」として便利だが…

本委員会では可能な限りエビデンスを示した記述を心がけていますが、そのエビデンスの中には特定の数値を海外諸国と比較したものも含まれます。

例えば、「日本が世界有数の長寿国である」という事実は、海外の国々と「平均寿命」を比較して初めて言えることです。

このように、健康に関する情報ではかなりの頻度で「国際比較」が行われていますが、今回は国際比較のデータに接する際の注意点について考えてみました。

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<出典>平成30年交通安全白書 https://www8.cao.go.jp/koutu/taisaku/h30kou_haku/zenbun/keikaku/sanko/sanko02.html



国際比較のメリット

まず、国際比較のプラス面をみていきたいと思います。メリットはなによりも「客観性」でしょう。

世界の国々と比較することで、日本がどのような状況に置かれているのか、知ることができます。

例えば、日本国内の2016年の交通事故での死亡者数は4,698人ですが、この数字だけみるととても多いように感じます。

しかし、アメリカの死亡者数は37,461人と桁が違います。

一方でイギリスの同じ年の交通事故死亡者数は1,860人です。

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このように比較することで、先進国同士で人口比で考えてみても、日本より交通事故死亡者数が多い国もあれば少ない国があることがわかり、日本の交通安全政策の進むべき道しるべが見えてくるのです。

したがって、本委員会としても「国際比較」は極めて重要と考えています。


国際比較の注意点

しかし一方で、国際比較には危険もはらんでいます。

データの定義が国ごとでやや異なるケースもありますし、データ集めも同じ人がやるわけではありませんので、そもそもその国のデータが信頼できるものなのかという疑いも出てきます。

緻密な国民性で知られる日本の役所でも統計データの訂正は日常茶飯事ですし…

おおらかで大雑把な国民性の国の統計データは…はっきり言ってしまうと、疑い出したらキリがありません。

しかし、それを言ってしまうと元も子もありませんので、本委員会では基本的に各国政府や名の知れた研究機関が出したデータは信用することにしています。


データは都合よく見せることができる

その上で、注意点として触れておきたいのは「条件設定」です。

国際比較データは扱う人によって都合よく見せることができるのです。

例えば、前出の交通事故死亡者数を例に日本とアメリカを比較した場合の話をしましょう。

人口比に換算しても、10万人あたりの死者数は日本が3.70人、アメリカが11.59人と圧倒的に日本が少ない状況です。

しかし、アメリカと日本では自動車を運転す人の割合も違いますし、車の保有台数も違います。

単純に人口比で比較するのも適切ではないのがわかります。

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では、「自動車走行距離」の視点でみてみるとどうでしょうか。

走行距離1億キロメートルあたりの死亡者数は、日本が0.64人、アメリカは0.73人になります。

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「あれ、日本ってアメリカより交通事故死亡者数は少ないじゃなかったっけ?」となりませんか。

このように、条件設定を変えるだけでデータの見せ方はいかようにもできるのです。


全く同条件での比較は不可能

さらにその「条件」というのもクセモノです。

交通事故の話が長くなってしまいましたので、視点を変えて、今度は「寿命」のデータを使いたいと思います。

例えば、先進国の代表国「アメリカ」の平均寿命のデータを例にとってみてみましょう。

実はアメリカは先進国であるにも関わらず、平均寿命が延びていないのです。

日本よりも不健康なのでしょうか?

実は必ずしもそうは言えないようなのです。以下はアメリカの平均寿命について報じられた新聞記事です。

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2018年12月23日 日本経済新聞 朝刊 6面より(前半部分の抜粋)
【ニューヨーク=関根沙羅】 米国の平均寿命が延びていない。2017年は前の年より0・1歳下がって78・6歳となり、インフルエンザが大流行した1918年以来約1世紀ぶりに3年連続で延びなかった。薬物の過剰摂取や自殺による若い男性の死亡率上昇が要因。働き盛り世代の死者が増えると労働人口の減少など経済面にも影響が及ぶため、トランプ政権も対策強化を急いでいる。  米疾病対策センターがこのほど最新の17年のデータを公表した。経済協力開発機構OECD)によると、16年までの数値が公表されている加盟33カ国で10年以降の平均寿命の延びは米国が最も低い。17年に男女とも平均寿命が過去最高になった日本など80歳超の上位国との差が開いている。  米国では、がんや心臓病などの疾患による死亡率は低下している一方で、若い世代の薬物の過剰摂取による中毒死や自殺の増加が深刻だ。
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アメリカの平均寿命が伸びない理由は「自殺」と「薬物摂取」なのです。

健康問題というよりは治安問題が肝なのです。


国際比較はあまりあてにできない

この事実が何を意味するのか。

それは「健康環境を考える際に、アメリカと日本の平均寿命を単純比較しても意味はない」ということではないでしょうか。

もし実質的に比較するとすれば、自殺と薬物摂取の割合を除くなどかなり込み入った計算をする必要があります。

このような事象はおそらく「平均寿命」以外でも数多く存在すると考えられます。

世界各国で人種や生活習慣、気候、価値観などが異なります。

本当の意味で国際比較をする際は、それらをすべて加味した上で行う必要がありますが、それは不可能です。

例外としては、日韓を頻繁に行き来する在日コリアンの方が、日本と韓国の比較を行う場合などは実質的な国際比較ができるかもしれませんが、それでも二国間です。

多国間での国際比較データはある程度バイアスがかかっていると言っていいでしょう。



まとめ

本委員会としての見解はシンプルです。

「国際比較」のデータには少なからずバイアスがかかっているものと認識し、鵜呑みにしすぎないこと

本委員会の記事でも、国際比較データを用いることがありますが、それらについても鵜呑みにせずに、参考程度にご覧いただくのがよろしいかと思います(笑)

以上、参考になれば幸いです。