健康長寿・アンチエイジング研究委員会

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高齢者に「危ないから外に出ないで」と言ってはいけない

老老介護の問題などが社会問題化するなか、高齢者の閉じこもりが増えていると言われています。

しかし、高齢者の「閉じこもり」が増えてしますと、社会的なリスクは逆に増大させることにつながります。

今回の記事では、これらの問題を見つめ直すとともに、高齢者と同居している方は当然として、将来的に介護の問題に直面するであろう日本全国のすべての方に対して、本委員会としての見解を紹介していきます。



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高齢者の「閉じこもり」が増えている

日本では高齢者が増えるのに応じて、一日中を自宅内で過ごす「閉じこもり」の高齢者が増えています。

もちろん、元気ハツラツで一日中外出して回る高齢者もいるにはいるのですが、高齢者全体の増加数が多いので、絶対数として「閉じこもり」高齢者は増えているといわれています。 


「閉じこもり」の定義とは

「閉じこもり」という言葉の解釈は人それぞれありますが、国の介護予防事業での定義として「外出する頻度が1週間で1回未満であること」と定義されています。

高齢者だけでなく、中高年であっても「仕事を除いた外出の機会」となったら、かなりの人が当てはまるのではないでしょうか。

そうなると、仕事を退職した後は…閉じこもりの問題は身近な問題なのです。


閉じこもりが続くと「要介護」になる

「閉じこもり」はなぜ良くないのでしょうか。

昔からインドア派の人は「自分は昔から外出するタイプではないから、問題ないのでは?」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

しかし「閉じこもり」はリスクは、喫煙習慣などと比べても勝るとも劣らないリスクがあると言われています。

まず、閉じこもりが続くと、当然のように「活動量」が少なくなります。

その結果、「廃用症候群」と呼ばれる心身の機能低下を誘発するリスクが高まってきます。

そしてその先には「寝たきり」や「認知症」が待っています…。

閉じこもりの要介護リスクについては、大阪医科大学の渡辺美鈴講師らが行った在宅高齢者を追跡した調査が参考になります。

閉じこもりの人とそうでない人の30ヶ月後の要介護発生率を比較した結果、閉じこもりの人は25.0%、そうでない人は7.4%と明確な差が出たのです。

閉じこもりの人のほうが3倍以上、要介護リスクが高いのです。


閉じこもりは短命であることが分かっている

さらに「閉じこもり」は、そうでない人と比べて死亡率が高くなることがわかっています。

2018年7月、東京都健康長寿医療センターは「閉じこもり傾向がある高齢者の方が死亡率が高い」という調査結果を発表しました。

この調査は2008年〜2014年の間、埼玉県和光市の健康な高齢者(65歳以上)1023人を追跡することにより実施しました。

具体的には、2~3日に1回しか外出しない「閉じこもり傾向タイプ」と、週に1回も他人と話さない「孤立タイプ」に分類し、それぞれ死亡率を比較しました。

すると、「閉じこもり傾向タイプ」にも「孤立タイプ」にも該当しない高齢者の死亡率は4.7%だったのに対し、両方該当する高齢者は12.8%と大きな差がありました。

「閉じこもり」は、死亡率も2倍以上に高めてしまうのです。

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「閉じこもり」の要因は

これまで「閉じこもり」のリスクを紹介してきましたが、それでは、なぜ「閉じこもり」になってしまうのでしょうか。

閉じこもりの要因は主に3つに分類されます。

1.身体的要因
膝痛、腰痛、転倒による骨折などで体を動かしづらくなる

2.心理的要因
転倒に対する恐怖心、配偶者を亡くした喪失感などにより、外出意欲が減退

3.社会環境的要因
家の周りに坂が多い、近所付き合いや仲間がいない、同居家族が「外出を控えるように言う」など、外出を消極的にさせる環境

1と2については、なかなか克服するのは難しいですが、3については自身や周囲の心がけで何とかなるのではないでしょうか。


「週に1回外出すれば良い」と考える

「閉じこもり」の定義を別の視点からみてみると、「週に1回でも外出すれば、要介護リスクや死亡率を高めることができる」というプラス思考もできるかと思います。

「閉じこもりになってはいけない」とマイナス思考で考えるよりも、「週に1回だけ外出すれば問題ない」と楽観的に考えることで気が楽になるのではないでしょうか。

例えば、毎日外出するのは難しいにしても、週に1回は外出して、体をきちんと動かすという習慣を作るのは、さほど難しいことではないように思います。

例えば、歩いて買い物に行くのが難しければ、週1回はタクシーを使って近所のスーパーマーケットなどに行き、お店の中を歩いて買い物するだけでも全然違うのです。

週1回であれば、交通費もなんとか支出できるのではないでしょうか。


家族が「危ないから外出しないで」というのはご法度

そのような高齢者の外出について、ハードルとなっているのは意外にも「見守る家族」の側にあります。

本人は外出する気があっても、同居家族が事故を心配してしまい「危ないから外に出ないでほしい」と言ってしまいがちなのです。

その結果、高齢者は外出意欲を失うという事象が数多く発生しているのです。

同居家族は「気遣い」のつもりでしょうが、その行為が「閉じこもり」を誘発し、将来的に要介護リスクと死亡率上昇を高めていることを認識する必要があります。

「危ないから外出しないでほしい」とは言わずに、「週に1回だけでもいいから外出しよう」と言ってみてはどうでしょうか。


閉じこもりを回避するためにできること

このように、閉じこもりを回避するのは本人だけの努力ではどうにもならないこともあります。

必要なのは周りのサポートです。

そして、そのサポートを担うのは一義的には「家族」です。

来るべき将来に向け、家族みんなで「何ができるのか、何をしてほしいのか」を話し合っておいた方が良いでしょう。

その際に参考となる情報として、2018年12月19日の日本経済新聞に掲載された「閉じこもりにならないための心がけ」の例を紹介したいと思います。

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2018年12月19日 日本経済新聞 夕刊 6面(抜粋)

<外出を促す>
○親が離れて暮らす場合、週1回は電話して外出するよう促す 

○嫌がる場合、「外を歩くと気持ちいい」と伝えて意欲を高める 

○「危ないから外に出ないで」は外出意欲を失わせるので禁句 

<外出が難しい場合は>
○友だちやボランティアなどを自宅に招いて会話する 

○電話やメールを活用し、週1回は他の人と交流する 

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まとめ

今回は「閉じこもり」についてみてきました。

本委員会としての見解は以下の通りです。

・同居家族は高齢者に対して「危ないから外出しないでほしい」と言ってはいけない

・「週に1度は外出すれば要介護リスクや死亡率は下がる」とプラス思考で考えると良い

以上、参考になれば幸いです。