健康長寿・アンチエイジング研究委員会

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「タバコを吸うと寿命が●年縮む」というような「損失余命情報」はどこまで信頼できるか

健康に関する情報に接していると<>「●●(特定の行為)を行うと、寿命が○年縮む」などという情報を見かけることがあります。

有名なのはタバコの例で「タバコを1本吸うと、寿命が12分縮む」と言われたりします。

この「寿命が○年縮む」という情報は、「損失余命」といいますが、今回はその情報について、どのように解釈していけば良いのか、本委員会としての見解を示していきたいと思います。

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「損失余命」は国際機関でも使用されている

特定の行為を行った場合に短くなる寿命の長さ「損失余命」は、各国際機関でも使用されている数字です。

具体的には、WHO(世界保健機関)や国連機関でも損失余命を使った指標などが公表されており、リスク評価の専門家の間ではメジャーな考え方です。

したがって、「損失余命」という指標については、ある程度は信頼できる数字と考えて差し支えないと思います。


損失余命の弱点

しかし、一方で「損失余命」には見逃すことができない弱点もあります。

何よりもまず、「その行為を行った時にメリット(伸びる寿命など)は無視されている」ということは考慮しなくてはなりません。

例えば、損失余命の例の中で、比較的ポピュラーなものに「ウインナーソーセージを1本食べると25秒寿命が縮む」というものがあります。

これは加工肉をたくさん食べた場合の発ガン性リスクを示したものです。

しかし、「例えば食べ物の中でウインナーが一番好き」という人がいたら、ウインナーを食べた場合に得られる効果(幸福感、脳の活性化、ストレスの低減)もかなりのものと考えられます。

損失余命の数字はそれらの「メリット」については一切無視されていますので、数字をそのまま鵜呑みにはできません。

あくまで平均的な「統計データ」

その他、「損失余命」の数字を扱う際に注意すべき点として、「膨大な数のサンプルデータから弾き出された統計データである」ということも頭に入れておく必要があります。

各個人の年齢や性別、体質によって実際の状況は異なりますし、損失余命の元となるデータが海外のものであれば、人種やその場所の気候などによっても異なります。

したがって、本委員会としては「損失余命はリスクを数値化し、分かりやすくするためには便利であるが、あくまで参考値として捉える」というスタンスで考えています。


損失余命の具体例

メリット・デメリットの双方を清濁併せ呑んだ上で、「損失余命」の具体的な数値をみていきましょう。

ここでは地域メディエータ・半谷輝己さんの著書「それで寿命は何秒縮む? 『損失余命』というリスクのものさし」で紹介されているデータを引用させていただきます。

なお、各項目の損失余命はすべてWHO(世界保健機関)が発表しているものです。

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「ひじきの煮物」小鉢1人前で失われる寿命 → 58分

これは意外な数字ではないでしょうか。

ひじきは健康に良いイメージの食べ物かと思いますが、無機ヒ素の濃度が非常に高いため、そのリスクを数字に直すと58分になります。

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野菜・果物不足が不足した一生涯の食生活で失われる寿命 → 1.87年

どの家庭でも小さい時から「きちんと野菜を食べなさい」と口酸っぱく言われていたでしょうから「一生涯でそのくらいしか縮まないのか」と感じるかもしれません。

ちなみに、1年あたりの損失余命は「8.2日」になるそうです。

たった1年で「1週間以上」の寿命が縮むと考えると、やはり野菜・果物不足は深刻なリスクがあるといえるでしょう。

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運動不足が一生涯続いた場合に失われる寿命 → 1.78年

奇しくも、野菜・果物不足の数字と似たような損失余命となっています。

仮に運動不足と野菜・果物不足が重なった場合、3.65年も寿命が縮むことになります。

やはり運動不足の解消は健康寿命を引き延ばすための基本と言えるでしょう。

肥満体型により失われる寿命 → 1.92年

肥満が誘発する生活習慣病等のリスクを数値化したものと考えていいでしょう。

肥満体型の人は運動不足の傾向が強いでしょうから、前出の運動不足1.78年と合わせると、損失余命は合計3.7年にもなります。

これは逆の視点で言えば、肥満体型で運動不足の人が、継続して運動を行ってダイエットに成功すれば、寿命が3.7年伸びるという考え方もできます。

このように考えると「損失余命」の数字もなかなか使い勝手があるのではないでしょうか。


食品よりは「習慣」の方が寿命を短くする

以上、いくつか損失余命の具体例をみてみましたが、傾向として言えるのは「食品単体の損失余命はさほど気にしなくて良いが、生活習慣による損失余命は大きい」ということです。

例えば、ウインナソーセージをいくら食べても、運動不足の損失余命には届きません。

損失余命という指標が我々に教えてくれるのは、「生活習慣の大事さ」といえるのではないでしょうか。


まとめ

今回は「損失余命」の数字について考えてみました。

本委員会の見解としては、以下の通りです。

・損失余命の数字は信頼できるが、一喜一憂せずに俯瞰して数字を解釈すべきである
・損失余命という指標は「生活習慣を正すと寿命が伸びる」ということを教えてくれている

以上、参考になれば幸いです。