健康長寿・アンチエイジング研究委員会

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「適量の飲酒は長生き」の主張に疑問を呈する

「まったくお酒を飲まないよりも、少しはお酒を飲む人の方が長生きできる」という話は、今ではかなり有名な「事実」として知られています。しかし、本委員会は日本人がこの言説をそのまま信じるのは危険だと考えています。 なぜそのように考えるのか、本委員会としての見解を紹介していきます。

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「少量のお酒は長生きに役立つ」という調査結果

お酒は百薬の長とも言われている通り、世界各国の調査結果によると「適切に飲めば長生きにつながる」ということが言われています。 日本での研究は、厚生労働省の研究グループが「お酒とがんとの死亡率の関係」を調査したものが有名です。 お酒を飲む量と頻度をもとに6つのグループに分けて、がん死亡率の違いを比較しました。 「お酒をまったく飲まないグループ」を1とした場合の、死亡率の比較は以下の通りでした。

お酒を全く飲まないグループ 1
2週間に1回程度お酒を飲む 0.79
2日に1合程度お酒を飲む 0.53
毎日1合程度お酒を飲む 0.9
毎日2合程度お酒を飲む 1.48
毎日4合程度お酒を飲む 1.54

この結果から、「2日に1合程度お酒を飲む」というお酒の付き合い方の人ががん死亡率が最も低くなることがわかったのです。 他の調査結果でも似たような結果が多く「全くお酒を飲まないよりは、少しはお酒を嗜んだ方が長生き」と言われているのです。


お酒は本当に長生きに役立つのか?

そうはいうものの、実は本委員会としては「お酒を呑むこと自体が長生きに役立つ」という考え方には疑問を感じています。 「お酒を適量を飲むと死亡率が下がるが、一定量を超えてくると、死亡率が上がる」という事実はは、飲酒量を横軸に、死亡率を縦軸にとると、グラフの形状が「J」の字に似ることから「Jカーブ効果」呼ばれています。

しかし、独立行政法人国立病院機構 久里浜医療センター院長の樋口進氏によると「Jカーブ効果が認められているのは、先進国の中年男女だけ」であり、万人に言えることではないのです。 そして、このJカーブ効果についてはあくまで現象を示しているだけであって、お酒と死亡率の因果関係は解明されていないのです。


お酒を飲むと死亡率が低下するのはなぜ

お酒と死亡率低下の因果関係は、明確な結果は出ていません。 しかし、推測の範囲ではありますが、巷でよく言われていることは「血行を良くすること」「酒宴での会話により脳の活性化が促されること」「楽しい場で心が満たされる」などの要因です。

ここで冷静になって考えてみましょう。 この「血行を良くする」、「脳の活性化」、「心が満たされる」などはお酒を飲まなくてもできることではないでしょうか。 本委員会としては、死亡率の低下は「お酒を飲む行為」と「お酒を飲む機会」の双方によりもたらされているものではないかと考えています。

というのも、「お酒を飲む行為」だけに限定すれば、死亡率は上がると思われるからです。

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お酒は「がん」のリスクを上昇させる

実は、飲酒は「がん」のリスクを高めることは数々の調査からわかっています。 有名なのは「食道がん」ですが、医学界でお酒が「リスク因子」として認定されている「がん」は、乳がん、肝臓ガン、大腸がん、すい臓がん、口腔がん、喉頭がん、咽頭がんなど数多くあります。

なぜお酒を飲むことが「がん」につながるかというと、アルコールは肝臓で分解されるとアセトアルデヒドになります。このアセトアルデヒドが「発がん物質」なのです。 日本人は体質的にアセトアルデヒドを分解する力が弱い対応が多く、そのタイプの人たちはお酒を飲むと「食道がん」のリスクを高くしてしまいます。

お酒を飲まない人と比べて、どのくらいリスクが高まるかというと、お酒を飲んで「顔が赤くならないタイプ」で食道がんのリスクが6倍、「顔が赤くなるタイプ(お酒が弱いタイプ)」に至ってはなんと54倍にも上がってしまいます。 お酒が弱い人が、無理にお酒を飲むのは「危ないこと」なのです。

多くの人が認知しているお酒のリスクとしては「肝臓に悪い」というものでしょうが、実はお酒を飲むことはそれ以外の危険も伴っていることを認識した方が良いでしょう。


お酒は万病の元

冒頭で「酒は百薬の長」というフレーズを出しましたが、じつはこの後に続く言葉があります。 それは「されど万病の元」です。 上に書いた「がん」の元となるだけでなく、多量飲酒は肝臓やすい臓、脳などを傷めていきます。 飲酒量を少し間違えてしまうだけで、お酒の「メリット」と「デメリット」のバランスは大きく崩れてしまうことは、いつも肝に銘じていたいものです。


まとめ

今回は、お酒についてネガティブな書き方をしましたが、本委員会の見解は以下の通りです。

「適量の飲酒が長生きにつながる」というのは事実であるが、だからといってお酒を率先して飲む必要はない。

特に体質的にアルコールの分解が苦手な人は「お酒をまったく飲まない」ことをオススメする。 (入浴で血行を良くしたり、他の趣味を楽しむなどして「酒宴」に代わる楽しみがあればそれで充分)
以上、参考になれば幸いです。