健康長寿・アンチエイジング研究委員会

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マンモグラフィーによる乳がん検診は必要なのか

今回の題材は「乳がん検診」です。 母親が娘に向かって「●歳になったら乳がん検診は必ず受けなさい」とアドバイスしているケースもよく見られますが、乳がん検診の効果については、賛否両論があるのも事実です。 それらに対して、本委員会としての見解を紹介していきます。

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一定年齢に達した女性は必須と言われるが

乳がん検診でよく言われるアドバイスとして、「●歳以上の女性は必ず受けた方が良い」と言われることがあります。 この根拠はどのようなものでしょうか。

乳がん検診の効果については、数多くの論文で示されていますが、それらの9つの研究成果を統合して「マンモグラフィーによる乳がん検診の効果」(乳がん死亡率が減るかどうか)を分析すると、以下のようになっています。

全年齢平均(39〜69歳)→検診を受けると、乳がん死亡率は19%低下
50歳未満 →検診を受けると、乳がん死亡率は16%低下
50〜69歳 →検診を受けると、乳がん死亡率は23%低下
(Cochrane Database syst Rev 2013 Jun 4より)


いずれも年齢による大差はありません。
ちなみに、39歳より若い人は、効果は相対的に小さくなることが示されていますので、この研究結果を見る限りは、39歳を超えたら一様にマンモグラフィーによる乳がん検診を受けた方が良いという考え方に「至りがち」かと思います。



乳がん検診の効果は誤差レベルというデータもある

しかし、同じ論文でも、別の視点から調査結果みてみると、乳がん検診の効果を疑問視するデータもみえてきます。 それは、「乳がんで死亡しない確率」を比較したデータです。

乳がん検診を受けたグループの生存率 → 99.64%
乳がん検診を受けなかったグループの生存率 → 99.57%

両者の違いは、0.07ポイントのみです。 統計的な有意差ではなく、誤差レベルといえるかと思います。

ちなみに、この調査は13年間の追跡結果ですが、この期間を30年に伸ばしても乳がん検診の効果は同じく誤差レベルといわれています。 乳がんは進行が遅いため、検診の効果は他のがんと比べて限定的なのです。


乳がん検診の弊害

乳がん検診の効果は意外と小さいことがお分かりいただけたかと思いますが、乳がん検診の弊害も見逃せません。 その代表が「偽陽性」の問題です。 マンモグラフィー乳がんの疑いが出たにもかかわらず、精密検査では乳がんではなかったパターンです。
2009年に発表されたアメリカの調査によれば、40代の女性1000人が乳がん検診を受けると、その10分の1にあたる100人が偽陽性となったといいます。 精密検査までに不安な毎日を過ごすストレスや体の負担がかかります。 そもそもマンモグラフィーによる乳がん検診を受けなければ、そういったことにはなりませんから、偽陽性の問題は乳がん検診を受けるかどうかの判断材料になりうるのではないでしょうか。


被ばくの心配もある

マンモグラフィーによる乳がん検診には被ばくのリスクもあります。 マンモグラフィーで浴びる放射線量は、0.05~0.15ミリシーベルトされており、通常の生活で浴びる年間平均値(2.4ミリシーベルト)と比較しても、かなり少ない数値ではあります。
しかし、前述のような「誤差レベルの効果」のためにこの放射線を浴びると考えると、判断に迷う方も多いのではないでしょうか。


過剰診断のリスクもある

これは若年層には当てはまらない論理ではありますが、乳がん検診には「過剰診断」のリスクもあります。 一言で言うと「乳がんと診断されたことによって幸福が奪われる」というものです。

乳がんと診断されると、ケースバイケースではありますが、乳房の手術、放射線治療抗がん剤などの治療が行われますが、精神的にも肉体的にも苦痛を伴い、幸せな日常が奪われることになります。 先述の通り、乳がんの進行は比較的遅く、末期ガンに至るまで数十年を要するケースも数多くあります。 例えば70歳の方が、乳がんを早期発見された場合と、放置されたケースをみてみるとどちらが幸せか…。

非常に難しい問題で、価値観によっても判断は異なりますし、結果論でしか分からないことではありますが、一つの知識として頭の片隅に置いていても損はないかと思います。

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お酒を飲む女性は乳がん検診は必須

一方で乳がん検診を受けた方が良い「属性」というものもあります。 それは「お酒を飲む人」です。 ハーバード大学医学部などの研究グループは、10万人以上の女性の健康状態を調査しましたが、その中で、30年にもわたって女性のアルコール摂取についても調査を行いました。 その結果を分析する際、3つのグループに分けました、

1.お酒を全く飲まないグループ
2.1日にワイン換算でグラス0.5杯、もしくは週にワインを3〜6杯お酒を飲んだグループ
3.1日にワイン換算で2杯お酒を飲んだグループ


約30年の間で調査対象者のうち乳がんにかかった方は約7700人でしたが、その患者と上記のグループ分けの関連をみてみると、「1.お酒を全く飲まないグループ」をベースにした比較で、2のグループは乳がん発症確率が15%増、3のグループでは51%増となったのです。 これだけの違いがあれば、飲酒習慣は明らかに乳がんリスクを高めると言うことができます。 したがって、女性で飲酒習慣がある方は、乳がん検診を受けても損はないでしょう。

もっとも、だからといってお酒を控えた方がいいとまでは言い切れません。お酒は百薬の長とも言われますし、各種研究結果によりほどほどのお酒の量、具体的には「1日のアルコール摂取量が約17g(日本酒で0.5合)」くらいの人が一番長生きすることもわかっています。 したがって、乳がんが怖いから絶対にお酒は飲まないという考え方は本委員会としてはおススメしません。 あくまで「検診の必要性」をベースにおいた考え方としてご理解いただければと思います。


乳がん家系」の場合

その他、乳がん検診の効果が高い属性としては、「乳がん家系」の方です。 身内に乳がんを患った方がいる場合は、他の人よりもリスクが高いですので、乳がん検診を受ける効果が高まります。 世界中の多くの研究をまとめた結果によると、親、子、姉妹の中に乳がん患者がいる女性は、いない場合と比べて「2倍以上」乳がんにかかりやすいことが分かっています。

しかし、乳がん患者の90~95%は遺伝以外の環境因子が主に関与していると言われていおり、乳がんの遺伝的要因は5~10%といわれていますので、さほど神経質に心配する必要はないかと思います。 いずれにせよ近い親族に乳がん患者がいる場合は、乳がん検診を受けることをおススメします。


まとめ

今回は乳がん検診について考えてみました。 全般的にはマンモグラフィーによる乳がん検診に対して疑問を投げかける内容でしたが、判断は人それぞれかと思います。 本委員会の見解は以下の通りです。

マンモグラフィーによる乳がん検診の効果は高くない (しかし効果がないわけではない)

乳がん検診のメリット・デメリットを理解した上で自分の価値観と相談して「検診に対してのスタンス」を決めると良い

以上、参考になれば幸いです。